小弥祐介 (moment Strings) PART2

初の5曲入りCDをリリースする「moment Strings」のヴィオラ奏者 兼 アレンジャーとして活動中の小弥祐介氏と、
moment主宰TERAとのトーク&インタビューです。そのPART2。


(2010年7月某日/momentにて/インタビュアー:TERA@moment)





 小弥祐介 (Yusuke Koya) PART2
 インタビュー (2010 Summer)

  Talk&Interview #91
 
  


    
 小弥祐介インタビュー (2010 Summer) PART2


TERA(以下:T):
では。前回に引き続きまして、モーメントストリングスの小弥さんにインタビューです。宜しくお願いいたします。

小弥祐介(以下:K):宜しくお願いします。

T:まず、あれから急にいろいろと展開がありまして。初のCDの録音をしました。どうでしたか、録音は?

K:そうですね、場所が場所だっただけに変に緊張することもなくみんなリラックスして臨んでいたように思います。もちろん演奏は真剣でしたけど。

T:それで、曲目について。収録曲5曲の説明を。お願いいたします。

K:1曲目の「Opus1」と4曲目の「酔っ払った犬の冒険」は前回に説明したとおりです。2曲目の「子守唄」は中世ヨーロッパの音楽をイメージしてできた曲です。雰囲気はちょっと暗いですが、ハーモニーの微妙な変化を感じ取っていただけると嬉しいです。3曲目の「バレエ」は先にヴィオラとチェロが弾く伴奏の形が浮かんで、その上にメロディーを付けていくうちにバレエダンサーが踊っている姿が浮かんだのでこのタイトルになりました。5曲目の「Times Go Around」は朝出かける際に自転車をこいでいるときにアイディアが浮かんで、その日一日頭の中で膨らまして、帰宅して楽譜に起こし始めてみたらあっという間にできてしまいました。今のところ最長の曲なんですが作成時間は一番かかっていません。聴いていただくとわかりますがずっとひたすら同じことを繰り返している感じのする音楽です。でも実際には全く同じことを繰り返している場面はありません。どこかが微妙に変化しています。タイトルの由来ですが、以前イタリア人のバロックヴァイオリン奏者の講習会を受けたときに言われたことが関係しています。そのときの曲がパッサカリアという低音の進行がずっと同じことを繰り返している上でどんどん旋律が変化していく変奏曲の1種だったのですが、その先生は「パッサカリアは同じことを繰り返しながらでもすこしずつ変化していく、まるで私たちの人生を表しているようだ。人生というのは同じことの繰り返しのように見えて実は常に変化している。」というようなことをおっしゃいました。この曲もそういったところがあるなぁと思いこのタイトルにしました。

T:なるほど。作曲した楽曲が実際、演奏されて音楽として、形になる瞬間は、どんな気持ちですか?

K:うーん、いろいろありますが、嬉しいが3割、恥ずかしいが4割、残念が2割、その他1割という感じです。残念は、自分の曲の拙い部分に、です。

T:すべて、当初の想像通りに、録音されましたか?

K:演奏前に思い描いていたものと実際の演奏との間にそんなに大きな差はありませんでした。ただ、個人的にはもう少し上手く弾きたかった、というところはあります。

T:CDは、8/8神戸での夏のモーメントイベント「moment SUMMER SESSION 2010」から発売ですね。

K:そうですね。とても楽しみです。イヴェントもCDも。

T:何か、また新曲が生まれたとか?

K:実はCDに入っていない曲のほうが数が多いです。「酔っ払った犬の冒険」に続く犬の曲が2曲あって、ついでに猫の曲も作ってしまいました。本当は僕は猫派の人間なんです。(笑) 他にも4〜5曲くらいストックしています。

T:そのうち、アルバムが出来ますよね。

K:できるといいですね。今回のCDに入っている曲は作り始めた頃の物なので本当は今ストックされている曲の方が個人的には気に入っている物が多く、早く聴いてほしいという気持ちがあったりします。もちろん今回のCD曲も聴いてほしいのですが。

T:話は変わりますが、今年はスティーブマックイーン生誕80年という事で、トリビュート企画をやっておりますが、約20曲アレンジして、それぞれの曲のアレンジについてのお話を聴かせて下さい。

K:今回やる曲はオーケストラ曲が多く、そうでない曲は「栄光のライダー」「ブリット」「ゲッタウェイ」「We may never love like this again(タワーリング・インフェルノ挿入歌)」くらいです。オーケストラから弦楽四重奏へアレンジするときに問題なのはとにかく音色が極端に限られることと音量の幅がとても狭くなってしまうことです。「ル・マン」「ハンター」といったル・グランの曲や今回始めてやる「華麗なる週末」では前者の問題が特に顕著になりました。特にジョン・ウィリアムズが作った「華麗なる週末」の音楽では、曲想がその楽器の特徴と強く結びついていてなかなか他の楽器での代用が難しくなっています。エルマー・バーンスタインが作曲を担当した「荒野の七人」「大脱走」やアルフレッド・ニューマンが担当した「ネバダ・スミス」では後者の問題が大きくなります。どちらも金管楽器やパーカッションの力強い響きが曲の性格を作っているので、弦4本だけだとなかなか大変になります。いずれの曲にしてもアレンジをする際にはこの辺の問題を意識しながらできる限りのことはやったのですが、これらの問題の解消には演奏者側の協力も必要になってきます。メンバーにもいろいろと助けてもらっています。「ブリット」「シンシナティキッド」「ゲッタウェイ」といったジャズ音楽のアレンジにはまた違った問題が出てきます。特にリズムの譜割は微妙すぎておたまじゃくしでは表現不可能なところが幾つかありました。そういうところはとにかく近い形に書いておいて、あとは演奏者に曲を聴いて覚えてください、って丸投げしました。(笑) 逆に弦楽四重奏との相性が良かったのは今回初めてやる「ガールハント」や「マンハッタン物語」「砲艦サンパブロ」「民衆の敵」あたりです。「民衆の敵」はバロック音楽を意識したスタイルで作られているので弦でやってもほとんど違和感がありません。他の3曲に共通するのは静かで美しいということです。一番弦の音質を活かせる曲調です。「ガールハント」と「サンパブロ」についてはもともとのサウンドの基盤が弦なのでアレンジ上の問題も少ないです。「マンハッタン」についても木管楽器中心の柔らかいサウンドなのでそのまま弦に置き換えても問題は少なかったです。

T:なるほど。その中で、わりと思い入れ強い曲はありますか?

K:特に「マンハッタン物語」。出来栄えはこの20曲の中でも1番気に入っています。もともととても綺麗な曲ですが、とても短く、また「ブリット」みたいなインパクトがないので聴き流されてしまいそうですが、響きの美しさという点ではようやくこれだけの物が作れるようになった、と自己満足しています。(笑)


T:マックイーンの映画的には、何か好きですか?

K:実はまだ「荒野の七人」くらいしか見ていません。もっといろいろ見てからその質問には答えたいと思います。

T:ですね。8月8日は、神戸のチキンジョージ、夏イヴェントですね。今回のセッションアーティストについて、小弥さんの観点から紹介していただけますか?

K:僕の観点からからですか?う〜ん、ZABADAKの吉良知彦さんは僕たちのカルテットの第3回ライヴのときに始めてゲストとして競演させていただき、それ以来たびたび競演させてもらったり、またZABADAKのライヴにも出演させていただいたりととてもお世話になっています。<モメカル>という省略形を最初に使われた方です。そしてとてもよくお酒を飲まれている方です。(笑)Picassoの辻畑鉄也さんとは去年のクリスマスセッションが最初だったので実はまだ半年過ぎたくらいなんですね。でもその半年の間にすでに4回ご一緒させてもらっています。ですのでもっと前からのお付き合いかと思っていました。皆さんご存知のメゾン物に代表されるようにとても耳に残る美しい旋律を作られる方です。Soulshineの鬼頭径五さんとは今年に入ってからのお付き合いですが、すでにもう3回ご一緒させていただいています。鬼頭さんは音楽も人柄もロックそのものという感じでかっこいいです。サンポーニャ&ケーナ奏者の瀬木貴将さんとは第1回のライヴのときからですので一番長いお付き合いです。体も音もとても大きいです。それもただ大きいだけでなく人に強く訴えかける物があります。お客さんの中でおそらくは瀬木さんのことを存じていなかったのであろう方が目に涙を浮かべて聴き入っている姿を見かけたことが何度かあります。その気持ちとてもわかります。G.A.Pの方々とは一昨年のクリスマスからのお付き合いですが、普段関西の方で活動されておられるため残念ながら中々頻繁にご一緒することはできません。でもみなさん気さくでとても素敵な方たちばかりで競演が決まるたびに合わせが楽しみになります。ストレートに心に響いてくるメロディーや歌詞がとても魅力的なバンドです。水本論さんはPicassoと同じく去年のクリスマスからです。ゲストの中では一番年代が近い方なのでその音楽や歌詞は親近感を感じます。少しハスキーな声がとても素敵です。

T:今回のストリングスメンバーは?

K:今回はファースト・ヴァイオリンが有馬真帆子、セカンド・ヴァイオリンが木野裕子、チェロは郷田裕美子、そしてヴィオラが僕です。

T:皆さん、同級生ですね。

K:あ、そうですね。僕以外の3人は大学で同じカルテットのメンバーでした。僕だけアウェーです。それぞれのキャラを一言で言うと有馬さんは小悪魔、木野さんは天然ボケ、郷田さんは食いしん坊といったところでしょうか。あとで殺されそうな気もしますが…。(笑)

T:いやいや。。。そうです!実はインタビュー中にすいませんが、8/8に鬼頭さんが新たな曲を急遽用意したいと。1曲ですが、、。神戸にゆかりのある<碇健太郎>さんという素晴らしいロックアーティストの曲なのですが。実は残念ながら少し前に先立ってしまった方なのです。本来なら毎年夏頃に追悼イヴェントがあるのですが。で是非!彼の曲を歌いたいとの事です。アレンジお願い出来ますか?

K:あ、資料が先ほど来ました。この状況でNoとは言えないでしょう。(笑)


T:ありがとうございます。秋から冬にかけても、いくつかイヴェントが決まりつつありますが、引き続き、宜しくお願いいたします。

K:宜しくお願いします。まずはマックイーンを完成させて、それからクリスマスですね。


T:ですね。またアルバム??? が出る頃に、このコーナーで。

K: 何かモメカルにしかできない面白いアルバムが出来ればいいなーと思います。


T:そうですね。本日は、ありがとうございました。

K:ありがとうございました。


end>>>

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