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野獣死すべし 里見八犬伝 愛情物語 夜叉
それから キッチン 月はどっちに出ている 共犯者
TERA:角川映画が続きますね。次は『愛情物語』。

今村:『里見八犬伝』やってる流れで、現場に角川さんが陣中見舞いに来たりしている時に、次こういう写真をやるんだ、みんなやってくれよと。もう決めごととしていったのが『愛情物語』。これは、かわいいお話。でね、楽しくできた。大変は大変。角川春樹さんが自分で監督やるっつんでね。大丈夫かいな?とまあ言っちゃあ失礼だけどさ。それはそれで立派にやられたんじゃないかな?

TERA:やっぱり、オープニングのミュージカルシーンですよね?

今村:ああそうね。そう、美術的な面で言うと、このオープニングのところと言うのは、なんだろうな?「ミュージカルの舞台」の様でありながら、半分ホントのようなっつーかね。それでいて最後に舞台っていうところを明かすっていう部分はミュージカルのホントの舞台で撮影したんだけれども、あそこは結構面白かったよね。自分の仕事としても。

TERA:最初から、そういうオープニングイメージは脚本にはあったんですか?

今村:映画館みたいのがいいっていう。あっ映画館じゃない劇場か。そこにね、恋人、ミュージカルの主人公が出てくる。そしたらそこで二人別れて、街を歩いていると、黒人に囲まれて、逃げた先が屋上へ。そしてまたそこで、ひとつあって、追っかけてたんじゃなくて、そこにまた自らの主人公が、実は女神なんだっていうようなショートストーリーを作っていたんだけど、あのミュージカルのシーンっていうのだけが最初あって、どういう展開かひとつも決まらなかった。ブロードウェイの劇場からでてくるっていう話ぐらいのところまでは角川さんがやって、であとはもうこっちで作っていってね。

TERA:結構、大きなセットですよね?東映撮影所?

今村:そうそう。うん。その一つのモデルになっているのが、『フェイム』とかこの時代ちょっと前だったかな?1年前だったかそこいらに、あーいう様な写真にしたいっていうのが角川さんにはあったんでしょう。で、ずっとそのミュージカルを見て、自分はバレイをやっていたんだけれども、ダンスをやって、そのミュージカルの主役になりたいっていう夢を持った少女の話になってたんだよ。

TERA:割とスタンダードなシンデレラストーリーでしたね。

今村:うんうん。そうだね。それと、足ながおじさんとかね。

TERA:撮影はどうでした?

今村:かかったよー、みんなダンサーでオーディションで連れてきた。オープニングのところと、最後んとこが、知世ちゃんが踊る。同じ舞台でね。総尺にしてまあ10分はあるか。んー十分じゃないかね?これだけ使えれば。あれだけのセット組んでも。

TERA:この作品の中で新たにチャレンジしたこととかは?

今村:まあ舞台以外でこういうことはやったことなかったわけだから。舞台で組んだらこれだけの広さをくめないわけだよ。で、映画と舞台とうまい組み合わせみたいな?セット部分の階段をあがると舞台になったんだ。練馬の劇場だけども、舞台の上に続く。そういう作りやね。

TERA:舞台美術もやってたんですよね?

今村:うんうん。舞台は、モダンダンス創作舞踊?ずーっと今でも関わりがあって、いくつかの舞台はやってきてるけどね。子供のものを中心にしながらだけどね。舞台は楽しいっすよ。

TERA:舞台の美術は、映画とは全く違うと思うんですけど。

今村:舞台で楽しいのは緊張感だよね。なんてたって幕あくまでは緊張するし、役者さんとかスタッフとかもまた同じやね。みんな。その楽しさだね。『愛情物語』の場合には舞台と映画の中間っていうかね。で、舞台では普通は出さないぐらいのリアリズムさをだし、また映画ではやらないようなこの寸法をこうつめたり、舞台の様な舞台みたいな作り込みをしてみたりとかね。っていうのが楽しみがあったかな?うん。

TERA:舞台以外のセットの中で何か印象的だったのは?

今村:やっぱり、「倍賞さんの家」?落ち着いた日本の家なんだけれども、昭和に流行ったというかね、日本間の座敷があった奥に、洋間がついているというような家を設定して組んである。これなんかはなんだろうな、特別なセットではないけれども、いかにもこう何ていうのかな、品のいいというかね、バックグラウンドでこの倍賞さん扮するこの人のダンナさんはどうしているだろうとか、ご両親はどうだったんだろう?っていうようなのを感じさせないっていうか、ただ忘れて懐かしさとか、家がいい落ち着きがあるっていうのだけ、専心にして組んだっていうセットになるかな。で、モデルの家としては、ロケはこれ国立の家なのね。国立とか、田園調布であるとか、高級な文化住宅をモデルにしたということになるかな。これはまあ、ざっくり言えば、僕の叔母、当然とうにもう亡くなっとるけど、その家が一つモデルになってる。玄関の雰囲気なんか完全に頂いた。でしょうねー。で、もうひとつは大森家っつって、長崎へ行って知世ちゃんが、育ったっていうか生まれたっていうのかな?怪し気なオカルトチックなおもしろいセットになったと思うけどね。

TERA:今改めて観て思うことってありますか?

今村:この前に『汚れた英雄』で角川春樹監督のおつき合いして、その後も『キャバレー』っていうような映画をおつき合いしたんだけれども、今思えばね、角川さんなかなかのプロデュースしてたし、映画やってるときの姿勢って言うのも立派だったと思う。映画っていうものはやっぱり、そのプロデュースするものの熱でしかないよね?スタッフはそこの中でしか熱をぶつけようがないんだから!そこがやっぱり、角川さんぐらいの人っていうかね、今でもあのくらい、圧倒的なエネ ルギーというか 破壊力をもったプロデューサーがいてくれたら、日本映画もまだまだだったかな。知世ちゃんだってそうさ。もっと、ね。今でも、もちろんいい役者だけどさ。もっといい状態にあったんじゃないかな?うんかわいかったよ。その頃も。
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↑↓冒頭のミュージカルシーンのセットとパース画。



↑↓ミュージカルシーン(屋上)のセットとパース画・図面。



↑↓中道家のセットとパース画。



↑↓大森邸のセットとパース画。



↑↓船のセット・パース画。